日本化学産業株式会社(社長・角谷 博樹)は、長年の表面処理薬剤の開発、製造技術の知見をもとに、EUをはじめ世界的に人体や環境への影響が懸念されている、有機フッ素化合物(PFAS)を含まない、無電解複合めっきの技術開発に取り組んできました。その結果、無電解複合めっきとしての高機能化とPFASフリーを両立させた、独自の無電解複合めっき技術2種の開発に成功し、2022年と2024年に特許を出願しました。
PFASの1種であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使った複合めっきは、一般に摩擦係数が低く、耐久性に優れていることから、広く摺動部品等に使用されています。一方で、PFASは化学安定性が高いため、長期間、自然界で分解されずに環境中に残留・蓄積することから、人体や環境への影響が懸念され、世界的に規制に向けた検討が進められています。そこで当社では、近い将来、PFASへの規制強化が進むと考え、社会課題解決に向けて先行して対応すべく、PFASフリーの複合めっき技術の開発に取り組んできました。
併せて、自動車、航空・宇宙、重工業、電子部品などの技術が進化する中で、表面処理薬剤に求められる機能も高度化しています。例えば自動車産業においても、急速にEV化が進み、摺動部品にも機能の向上や環境への配慮がより求められるようになっています。
そこで、当社独自の表面処理技術をさらに進化させることで、そうしたニーズに応えようと、PFASフリー化と高機能化を両立させる、無電解複合めっき技術の開発に取り組むこととしました。
当社は長年にわたり、各種めっき液原料や無電解めっき薬液の供給とプロセス開発を通じて、電子部品や樹脂の金型、電鋳品など、さまざまな用途の表面処理ニーズに応えてきました。こうした、非鉄金属を中心とした各種金属塩類に関する知見をもとに、社会課題である「PFASフリー化」と産業界の要請である「高機能化」を両立させる技術の開発に取り組みました。
検討の結果、PTFEに代わる複合材の選定と、それを分散安定化させる技術の開発に成功しました。
現在、PTFE複合めっきを行っているお取引先において、この技術に切り替える場合も、新規の設備投資をせずに運用できます。
また、この技術は、PTFEの代替としての活用だけでなく、これまでPTFE複合めっきの適用が難しかった用途にも活用いただけることから、より可能性が広がるものと考えています。
めっき皮膜中に新規樹脂パウダーやマイカなどの微粒子を共析させると、金属皮膜のみでは得られない「滑り性」「硬度」「耐摩耗性」といった特性を付与することができます。そこに、当社独自の微粒子の表面状態をコントロールする「微粒子分散技術」が生かされています。
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微粒子を最適な状態で共析させる技術
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最適な表面電荷と粒径分布を実現する技術
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めっき液に複合化させやすく、かつ十分な性能を発揮できる「樹脂パウダー」を、粒子分散とめっきへの共析の独自のノウハウを生かして配合。
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PTFE複合めっきと同等の「撥水性」「低摩擦性」を持つ、めっき皮膜を形成。
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PTFE複合めっきの皮膜と異なり、「親油性」が高いため、潤滑油になじみやすい。これにより、潤滑油との併用が可能なことから、潤滑油を使用する摺動部品等での使用も可能。
めっき表面
断面研磨像
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油分の多い環境下でも、摺動性が求められる摺動部品への活用。
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PTFE複合めっきでは課題とされている、製造・取り扱い時の薬液管理の困難さや、界面活性剤の多量使用などの問題を同時に解決可能。
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PTFE複合めっきと異なり、界面活性剤が不要なため、高い「耐摩耗性」を保持したまま、摩擦係数の低減が可能。これにより、「低摩擦性」が求められる用途での活用が可能。
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マイカの固体潤滑材としての特徴として、「耐焼き付き性」が高いため、高面圧環境下での摺動特性に優れる。
めっき表面
断面研磨像
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高い皮膜硬度と耐焼き付き性が求められる摺動部品への活用。
当社では、特長ある表面処理薬剤をR&Dセンターで開発しており、きめ細やかな技術支援体制をとっています。これにより、PFASフリーの複合めっきをはじめ、さまざまな表面処理ニーズに対応した、幅広い素材や形状の対象物等に適したご提案をさせていただきますので、まずはお問い合わせください。
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